GenKanの分析レポートについて
弊社ではGenKanを導入したユーザー様から入手した生産に関するデータから製品および生産工程の統計的な分析を行っております。今回はこのGenKan分析レポートより「中央値と平均値の比較」と「検査工程分析」を取り上げたいと思います。中央値と平均値に差があると、なぜ作業時間や生産量のばらつきを見出せる可能性があるのか、また作業の正確さが求められる検査工程において平均サイクルタイムと各作業員のそのばらつきを分析する方法をお伝します。
中央値と平均値の比較
製造業における生産管理において、生産量もしくは作業時間にばらつきが生じることは好ましくないとされています。ばらつきを発見するためにはいくつか方法があるのですが、その一つに各工程の一つ一つのサイクルタイムを取得し、分析を行う方法があります。弊社ではIoTを用い、データの取得から計算、分析までを行なっております。ここでは、サイクルタイムの平均値と中央値を比較しばらつきを発見する分析をご紹介したいと思います。
それでは、どのように分析を行うのか図を参考に説明したいと思います。図1ではある製造業における工程別のサイクルタイムを中央値と平均値でそれぞれ算出したものになります。このなかで同一工程において平均値と中央値の間で乖離が認められるような数値があった場合ばらつきが生じている可能性があります。
図1.A~E工程におけるサイクルタイムの中央値と平均値の比較図
具体的には、図1の工程Cをみてみますと、中央値のサイクルタイムが22秒であるのに対し平均値は38秒であるため、ばらつきが発生している可能性があります。
なぜ平均値と中央値のサイクルタイムに乖離があることにより、ばらつきが見つけ出せる可能性があるのかというと、平均値は外れ値の影響を受けやすく、中央値は外れ値の影響を受けないため実態に近い値を示す傾向があるためです。つまり、平均値と中央値の乖離が発生していることは、平均値が外れ値の影響を受けたということになります。
実際に、図2の工程Cにおけるサイクルタイム一覧をみると、サイクルタイム(value)に200秒という外れ値と見受けられるような値があり、これにより工程Cの平均値が中央値と比べ高くなったことが考えられます。
図2.工程Cにおけるサイクルタイム一覧
外れ値が発生する原因ですが、製造業では生産工程において何らかの理由により作業が中断したためサイクルタイムが長くなったことによるものが挙げられます。従って、平均値が中央値よりも高くなるケースが見受けられます。ただし、外れ値は異常に長く時間がかかった場合もあれば、逆にサイクルタイムが異常に短かった場合も外れ値になります。そのため、異常に長いサイクルタイムと異常に短いサイクルタイムが紛れることで平均すると外れ値がみえないといった事象が発生する可能性があります。
検査工程分析
GenKanのレポート分析では各工程における作業者ごとのサイクルタイムを分析することができます。このようなデータの見える化により各工程の生産性の改善に役立てることができる他に、正確な作業を行えているか分析を行うことができます。作業の正確さが求められる工程の代表として目視で行う検査工程があります。ここでは弊社のレポートを通じ検査工程における分析についてご紹介したいと思います。
検査において、不良品を見逃さない方法として検査時間(サイクルタイム)を一定の秒数に定めるという方法があります。GenKanレポートでは各担当者の平均サイクルタイムと規定したサイクルタイムを比較することにより、検査作業が正確に行われているか分析することができます。もし、規定の検査時間を定めていない場合でも、各作業員のサイクルタイムを参照にしベストのサイクルタイムを見つけ出すことができます。
図3の通り、点線で各作業員の3ヶ月の平均サイクルタイムを示し、その日に実際行った作業のサイクルタイムは点で表示されています。作業員Aさんの場合、日々の実績は平均より大きく乖離していることに対して、作業員Cさんは安定的に作業時間を保つことができていることが分かります。
その原因として、作業員Aさんの方が不良品を多く対応している可能性や、Aさんの方が検査作業の熟練度が低いため、不安定なサイクルタイムになっている場合もあります。いずれにしても、Aさんの作業に何か異常な要素があると推測でき、原因の究明とその解消によってより安定的に作業ができるようになります。
図3.検査工程における担当者ごとの平均サイクルタイム時系列図