見積原価計算は、原価計算のもっとも古い形態の1つであるが、現在でもよく使われる。
見積原価計算の計算原理
- 原価見積は、原価単位あたりの実際製造原価を、非科学的方法により予定した額である。
- 見積原価は、原価見積にその製品の実際生産量を乗じた額をさす。
- 実際生産量は実際に生産したあとでなければ計算できない。
- 丼勘定方式の計算を実施する場合には、原価見積が不可欠の計算要素である。つまり、勘で出した原価を使わざるをえないのである。
- 丼勘定方式を採用する企業において原価見積もりが不正確のとき、売価を正確に決めることができないため、儲かっていると思い込んでいながら実は損をしているということが起こりうる。
- また仕掛品と製品の期末有高が不正確になり期間損益計算もまた不正確になる。
- 原価見積もりの正確性をチェックする方法として、製品の実際製造原価と原価見積もりとを直接比較する方法がある。
- 製品の実際製造原価を出すためには、リアルタイムの原価の移り変わりを追跡し、集計し、計算する必要がある。
- 原価見積と見積原価が実績と異なる値を出した時は見積もりが誤っていたと考える。
- 見積原価と実績が一致したとしても、異なる2つの勘定科目がそれぞれ誤っていて、相殺した結果、数字が一致しているということもある。(直接材料費の見積もりが実際より高く、直接労務費の見積もりが実際より低いなど。)
見積原価計算の長所と短所
- 見積原価計算の長所は簡略化することで、事務経費を節約することができることにある。
- 見積原価計算の短所は簡略化によって、正確さが失われること、詳細さに欠けてしまうことにある。
- 例えば見積計算では、原価見積が間違っていることが分かっても、どの部門の原価見積が誤まっていたのかまたどの部品の原価見積が誤まっていたのかなどの詳細を知ることができない。
- 見積原価計算において計上される実際直接材料費は、棚卸計算方法によって算出された材料費で、これは実際の直接材料費を示さない。
- なぜなら材料の蒸発や損失などといった材料の量の変化が考慮に入れられていないからである。
- 上記の問題を解決するために採用されたのが「継続記録法」であるが、これには膨大なコストが生じる。
- 棚卸計算方法では、製品に材料費を紐づけることが難しい。
- 上記の理由から、材料費を直接材料費と間接材料費とに区別して計算することができない。
参考
岡本清(2000) 原価計算 国元書房